テニスラケットのストリングパターンは、16×19より18×20のほうが細かく、一般的には打ち出し角が低くなり、方向性やコントロールを得やすいとされています。
それなら、なぜプロ選手は全員18×20を使わないのでしょうか。
2026年8月2日時点のATPランキングトップ20を調べると、16×19が圧倒的に多いわけではなく、18×19や18×20を使う選手も意外に多いことが分かりました。ランキングはATP公式サイトを基準にしています。
ATPトップ20のストリングパターン
プロは市販モデルと異なるラケットを使っていることがあるため、メーカーの商品ページではなく、プロストックや実使用ラケットに関する公開情報を優先しました。
| 順位 | 選手 | 実使用パターン | 情報の確度 |
|---|---|---|---|
| 1 | ヤニック・シナー | 16×19 | 高い |
| 2 | アレクサンダー・ズベレフ | 18×20 | 高い |
| 3 | カルロス・アルカラス | 16×20 | 高い |
| 4 | フェリックス・オジェ=アリアシム | 16×20 | 高い |
| 5 | ノバク・ジョコビッチ | 18×19 | 高い |
| 6 | アレックス・デミノー | 16×19 | 高い |
| 7 | ダニール・メドベージェフ | 18×19 | 高い |
| 8 | ベン・シェルトン | 16×19 | 高い |
| 9 | フラビオ・コボッリ | 未確認 | Radical系プロストック |
| 10 | テイラー・フリッツ | 18×20 | 高い |
| 11 | アレクサンダー・ブブリク | 16×20 | 有力 |
| 12 | イジー・レヘチカ | 16×20 | 有力・変更歴あり |
| 13 | キャスパー・ルード | 16×19 | 高い |
| 14 | アンドレイ・ルブレフ | 18×20 | 高い |
| 15 | ロレンツォ・ムゼッティ | 16×19 | 高い |
| 16 | ラーナー・ティエン | 16×19 | 有力 |
| 17 | ヤクブ・メンシク | 18×20 | 高い |
| 18 | バレンティン・バシュロ | 16×19 | 有力 |
| 19 | フランシス・ティアフォー | 16×19 | 有力 |
| 20 | フランシスコ・セルンドロ | 18×20 | 有力・資料差あり |
シナー、ズベレフ、ジョコビッチ、メドベージェフ、メンシクなどは、実使用ラケットのパターンについて比較的詳しい情報があります。
一方、コボッリはRadical系プロストックであることは分かっているものの、現在の穴数までは確認できませんでした。セルンドロも18×20とするプロファイルがある一方、2025年のストリンギング情報には16×19という記載があり、完全には一致していません。
トップ20の割合
| 分類 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 18×19・18×20で確認度が高い | 6人 | 30% |
| 18×20が有力なセルンドロ | 1人 | 5% |
| 16×20 | 4人 | 20% |
| 16×19 | 8人 | 40% |
| 未確認 | 1人 | 5% |
したがって、細かい18本メインは**少なくとも6人、セルンドロを含めれば7人、30~35%**です。
さらに16×20を加えると、標準的な16×19以外を使っている選手は10~11人になります。
「現代のプロはほとんど16×19」と思われがちですが、実際には細かいパターンや中間パターンもかなり多く使われています。
細かいストリングパターンは、なぜ安定しやすいのか
同じフェイスサイズやフレーム性能で比較した場合、18×20は16×19よりストリング同士の間隔が狭くなります。
一般的には、16×19はスピンやパワーを得やすく、打ち出し角が高めです。18×20は打ち出し角が低く、方向性や精密性を得やすい傾向があります。16×20と18×19は、その中間を狙ったパターンです。
| パターン | 一般的な傾向 |
|---|---|
| 16×19 | 高い打ち出し、スピン、飛距離 |
| 16×20 | 16×19より少し弾道を抑えやすい |
| 18×19 | 18×20の方向性を残しつつ、少し持ち上げやすい |
| 18×20 | 低い打ち出し、方向性、飛距離の抑制 |
ストリングが横方向へ動いて戻るスナップバックは、回転量だけでなく打ち出し角にも影響します。オープンなパターンほどストリングが動きやすく、回転や高い打ち出しを得やすいことが実験でも示されています。
ただし、ここでいう安定感は、フレーム自体の面ブレとは別です。
オフセンター時の面ブレには、重量、スイングウェイト、ツイストウェイトなども大きく影響します。18×20に変えるだけで、ラケットそのものがねじれにくくなるとは限りません。
それなら、なぜ全員が18×20を使わないのか
理由は、テニスにおける安定感が一種類ではないからです。
18×20には、打ち出しや飛距離を抑え、強く打ってもアウトさせにくくする安定感があります。
一方、16×19には、ネットを高く越し、スピンでコート内へ落とす安定感があります。
プロは静止した状態から毎回フラットに打つわけではありません。左右へ振られ、低い打点や苦しい体勢からでも、ボールを持ち上げて深く返す必要があります。
18×20でアウトが減っても、ネットミスや浅い返球が増えるなら、試合全体では安定したとはいえません。
**18×20は「低く正確に飛ばす安定」、16×19は「高く通して回転で落とす安定」**と考えると分かりやすいでしょう。
また、プロは高いスイングスピード、正確な打点、重いラケット、硬めのポリエステルなどによって、16×19の飛びや高い打ち出しを抑えられます。
16×19の回転や守備力だけを受け取り、暴れやすい部分を技術やセッティングで補えるため、全員が18×20へ移る必要はないのです。
プロの16×19は、市販品と同じとは限らない
ストリングパターンは、総本数だけでは判断できません。
同じ16×19でも、中央部を細かく配置したラケットと、全体を広く配置したラケットでは、打ち出しやスピン性能が変わります。
そのため、プロが使う16×19が、一般的な市販16×19よりコントロール寄りである可能性はあります。
ただし、プロの16×19は中央部が18×20と同じ密度であると一律に断定できる実測データはありません。比較するには、中央部のストリング間隔を実際に測る必要があります。
一方、プロ専用のドリルパターンが存在することは確認できます。
ジョコビッチは以前の18×20から、本人向けに調整された18×19へ変更しています。デミノーのSteam系ラケットも、市販の16×18ではなく、専用の16×19とされています。レヘチカも通常モデルにはない16×20を使用していると報告されています。
プロは16×19か18×20かを単純に選ぶだけでなく、穴の配置そのものを調整している場合があるのです。
16×19でホームランが多い中級者はどうするべきか
16×19が主流だからといって、すべての中級者に合うとは限りません。
次のような状態が続く場合は、16×20、18×19、18×20を一度試してみる価値があります。
- 厚く当てるとホームランになる
- 相手の速いボールを受けるとリターンが浮く
- ラリー中、アウトが怖くてスイングを緩めてしまう
- スピンを強くかけないとコートに収まらない
少し細かいパターンへ変えると、打ち出しや飛距離が抑えられ、リターンをコンパクトに返しやすくなったり、ラリーで最後まで振り切りやすくなったりする可能性があります。
特に16×19では飛びすぎるものの、18×20は難しそうだと感じる人には、16×20や18×19が現実的な候補です。
ただし、これは必ず改善するという意味ではありません。フェイスサイズ、フレームの厚さ、剛性、重量、スイングウェイト、ストリング、テンションも同時に変わるためです。
ストリングパターンだけを比較したい場合は、できるだけ近い重量やフレーム特性のラケットを試したほうが違いを判断しやすくなります。
デメリットは、サーブや守備で持ち上げにくくなること
細かいパターンへ変えると、ストロークやリターンが安定する一方、ボールが上がりにくいと感じる可能性があります。
特に影響が出やすいのが、スピンサーブやキックサーブです。
16×19の高い打ち出しや回転アシストを利用している人は、18×19や18×20に変えると、セカンドサーブがネットにかかったり、キック量が減ったように感じたりするかもしれません。
オープンパターンは一般にスピンと高い打ち出しを得やすい一方、細かいパターンは低い弾道になりやすいためです。もっとも、実際の回転量はスイング速度やフォームの影響も大きく、18×20でも十分なスピンをかけられる人はいます。
つまり、
- ラリーとリターンは安定した
- しかしスピンサーブと守備の返球は難しくなった
ということも起こり得ます。
試打ではストロークだけでなく、リターンとセカンドサーブまで打って判断する必要があります。
まとめ
ATPトップ20では、18×19または18×20を使っていることが比較的明確な選手が6人いました。セルンドロを含めると7人が有力で、割合は30~35%です。
細かいストリングパターンは、決して一部の特殊な選手だけが使うものではありません。
それでも全員が18×20を使わないのは、16×19にもネットを高く越し、回転で落とすという別の安定感があるからです。
一方、16×19でホームランや浮いたリターンに悩んでいる中級者は、主流だからという理由だけで使い続ける必要はありません。
16×20、18×19、18×20を試すことで、ラリーやリターンが安定する可能性があります。
ただし、スピンサーブや苦しい体勢からの返球は持ち上げにくくなる可能性があります。
どのパターンが上級者向けかではなく、アウト、ネット、リターン、セカンドサーブのうち、自分がどのミスを減らしたいかで選ぶことが重要です。
参照URL
ATPランキング
https://www.atptour.com/en/rankings/singles
ストリングパターンの基礎・実験
https://twu.tennis-warehouse.com/learning_center/spinpatterns.php
トップ選手の実使用ラケット
ヤニック・シナー
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/jannik-sinners-racquet/23204
アレクサンダー・ズベレフ
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/zverevs-new-racket/43136
カルロス・アルカラス
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/carlos-alcaraz-racquet/26903
フェリックス・オジェ=アリアシム
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/felix-auger-aliassimes-racquet/5149
ノバク・ジョコビッチ
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/novak-djokovics-tennis-racquet/2935
ダニール・メドベージェフ
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/daniil-medvedevs-tennis-racquet/4382
キャスパー・ルード
https://www.perfect-tennis.com/casper-ruud-racket/
アンドレイ・ルブレフ
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/andrei-rublevs-racquet/5153
ロレンツォ・ムゼッティ
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/lorenzo-musettis-racquet/27519
フランシス・ティアフォー
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/what-is-frances-tiafoes-racquet/24021
フランシスコ・セルンドロ
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/francisco-cerundolo-player-profile/27504
テイラー・フリッツ
https://tenniscompanion.org/players/gear/taylor-fritz/
アレクサンダー・ブブリク
https://www.tennisnerd.net/gear/racquets/pro-player-racquets/bublik-with-a-blacked-out-racquet/45720
